380km自転車旅:霞ヶ浦から茨城の海岸まで
- Marc

- 10月20日
- 読了時間: 6分
はじめに 霞ヶ浦から茨城の海岸まで
夏だ。最後に遠出をしたのは4月の大阪旅行で、それからずっと忙しくしていた。最近引っ越しもあって、できるだけ節約したい。そんな状況だからこそ「よし、今回は自転車で旅をしよう」と決めた。
実はやってみたいルートはいくつかあったが、その中でも霞ヶ浦がずっと気になっていた。
天気予報を見てみると、最高気温は38℃、しかも風はほとんどなし。正直、過酷な条件だとわかっていたけれど、心のどこかで「こういう無茶な状況こそ面白い」と思ってしまう。だから迷わず決行。
目標は2日間でおよそ380km。
さあ、出発だ。
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一日目(約170km):最高のコンディションに恵まれて
土浦までのライド
真夏の早朝、まだ眠っている東京を抜け出す。、午前5時にはすでに街が少しずつ目を覚まし始めている。空気はすでにぬるく、じっとしていても肌が少し汗ばんでくる。
「今日も暑くなりそうだな」と思いながら、自転車にまたがった。街は静かで、車も人もまだまばら。朝の東京を走るのは不思議な気持ちだ。普段は人で溢れている道を、今は自分だけのペースで進める。
まずは上野公園へ。池のほとりでは、朝日に照らされたハスの花が静かに開いていく。水面に映る光と蝉の声。ベンチに腰かけてコンビニのパンとコーヒーで軽い朝食をとりながら、「ああ、夏の朝っていいな」と思った。
再びペダルを踏み出す。浅草を抜け、遠くにスカイツリーが見える。朝日を背に受けながら、その姿を見上げると「いよいよ出発だ」という実感がこみ上げてくる。次第に街のビルが低くなり、道路の周りに住宅や小さな店が増えていく。東京の境を越え、ゆっくりと都会の輪郭が遠ざかっていく。
国道6号に入り柏市方面へ向かう頃には、気温はすでに30℃を超えていた。午前10時前だというのに、額から汗が止まらない。それでもペダルを漕ぐ足は軽く、心はどこか高揚していた。街を抜け、茨城県に入った瞬間、景色はがらりと変わる。

ビル群の代わりに田んぼや畑が一面に広がり、湿った土の匂いと夏の風が頬をかすめる。蝉の声が響き渡り、懐かしい気持ちが胸に広がった。まるで都会から一瞬で田舎へワープしたような感覚だ。
途中、牛久沼でひと休み。湖面がきらめき、静かな水辺に癒される。少し先には、あの巨大な牛久大仏の姿が堂々と立っていて、その圧倒的な存在感に思わず足を止めた。
土浦に近づく頃にはアスファルトが少なくなり、風が体を包む。自然に囲まれながら走る心地よさに、これからの長旅への期待が高まった。
霞ヶ浦の強風
そして霞ヶ浦へ。目の前に広がる湖は予想以上に大きく、そのスケールに驚かされる。湖畔には蓮の花が咲き誇り、釣り人の小さな小屋が点在している。夏の光を反射する水面は美しく、思わず見とれてしまうほどだった。
しかし同時に、湖の上を吹き抜ける強風が体に襲いかかる。ハンドルを取られそうになりながら、必死でペダルを漕ぐ。太陽は西へ傾き、夕暮れの気配が空を染め始める。
霞ヶ浦大橋を渡ると、遠くに香取市の街並みが見えてきた。湖を背にして進むその瞬間、風との格闘が一気に終わりを告げるように感じた。
利根川と花火
香取神宮に立ち寄った後、利根川沿いを走る。両側には田畑が広がり、夕焼けが一面をオレンジ色に染めていく。川面に映る光景は幻想的で、しばらく見とれてしまった。

夜が近づく頃、小見川の空に突然花火が上がった。偶然出会った夏祭りの光景に、疲れも一瞬忘れてしまう。夜風を浴びながら鹿嶋市へと向かう一本道を走ると、ようやく一日目が終わりを迎えた。
二日目(約200km):焼けつくような暑さとの戦い
銚子半島
二日目の朝、さらに厳しい暑さが体を襲う。

向かった先は銚子半島。須田浜海岸では波が白く砕け、潮風が肌を刺すように吹きつける。
ここは「日本で一番早く朝日が昇る場所」として知られており、特別な土地に立っている実感が湧いた。
途中で立ち寄った満願寺。静かな境内に足を踏み入れると、蝉の声と風の音だけが響き渡る。

そして屏風ヶ浦の断崖絶壁。海にそびえ立つその姿はまさに大自然の芸術で、しばらく足を止めて眺めてしまった。旅の疲れも、この景色に癒される。
成田までの地獄
しかし感動も束の間、地獄のような道のりが待っていた。国道126号から296号へと進み、成田空港の滑走路沿いを走る頃には、気温はさらに上昇。体感では40℃近くある。30分ごとに立ち止まっては木陰で15分休み、また走り出す。その繰り返しだ。
心が折れそうになりながらも、友人の家に立ち寄って少し休憩し、ようやく成田山新勝寺に到着。汗まみれでお参りを済ませると、不思議と力が戻ってくる。けれども、まだ半分以上の道のりが残っていた。

帰り道
午後6時、太陽は沈み始めているのに、東京まではまだ5時間以上。国道51号から296号、さらに千葉街道14号を経て都心へと戻るルートを選んだ。途中、ユーカリが丘駅で食事をとり、疲れた体にエネルギーを補給する。
夜9時を過ぎてもペダルを回し続ける。街の灯りが増えるにつれて、不思議と心も軽くなる。遠くにスカイツリーの姿が見えた瞬間、体中に力が湧いてきた。「ついに帰ってきたんだ!」という喜びが胸を突き上げ、最後の力を振り絞ってゴールへと辿り着いた。
結論
今回の旅は、本当に特別な経験だった。全身に日焼け止めを塗ったつもりなのに、腕や脚はサイクリスト独特のまだら模様。鏡を見るたびに笑ってしまう。
でも真面目に言えば、この旅で自分の限界に少しずつ自信を持てるようになった。数年前は50kmですら大冒険に思えたのに、今では200km以上を走り抜けられる。
最初は東京から横浜の往復(50km)が精一杯だった。次に城ヶ島まで(往復160km)挑戦し、灼熱の太陽に肌を焼かれた。今回はついに初めての宿泊を伴い、2日目には200km超え。合計31時間、気温36〜38℃の中で走り抜けた。
特に二日目は精神的に限界だった。国道126号では30分ごとに休まなければ進めず、「もうやめたい」と何度も思った。それでも「選択肢はない、進むしかない」という不思議な覚悟が生まれ、最後には東京まで辿り着けた。

そして気づいたのは、この旅が単なる体力勝負ではなく、「心のあり方」の挑戦だったということ。普段の生活では何事も計画し、準備し、「もしこうなったら」と考えてしまう。でも自転車旅では、ただ走り出すしかない。パンクしても、暑すぎても、宿がなくても、それも含めて旅の一部になる。
トラブルさえも、家に帰って振り返れば楽しい思い出に変わるのだ。
道中で感じた風の優しさ、畑の匂い、街角で聞こえた子どもたちの笑い声。汗を流し、息を切らし、夕焼けや海の景色に心を奪われる。その瞬間ごとに、自分が大地と一体化しているように思えた。
結局のところ、この旅は「地球とつながる」体験だったのかもしれない。熱気、呼吸、リズム、そして時間。そのすべてを抱きしめながら、自分という存在が自然の一部になっていく感覚。自転車を通じて見えたのは、単なる道ではなく、命の流れそのものだった。
380km自転車旅:霞ヶ浦から茨城の海岸まで - Marc



































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